けテぶれ〜学習力を伸ばす宿題革命〜

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広告と取扱説明書を読み比べよう

単元名「広告と取扱説明書を読み比べよう」

単元の進め方

教科書ではこの単元で「」に気づかせよとしている。

教師が「広告」と「説明書」の違いに導くという指導は、単元の終盤まで行わない。

単元の最終段階で子どもたちは何が出来るようになればいいかという「目標」を具体的に示し、そこを目指す意義と、目指すための道具(手段)を与えるのみである。

目標・意義・手段の確認 

目標:「広告」と「説明書」の違いについてわかったことを班でまとめ、クラスに発表する。

意義:与えられる学習から、考え出す学習へ。

※もちろん意義に同意することも大切だが、もっと単純に、教師による一斉授業より、仲間と協力して何かを生み出す学習のほうが格段に“楽しい”。この楽しさが子どもたちの主体性を何よりも刺激する。

手段:靴・地図・十徳ナイフ。

①手引き:教科書の後ろに掲載されている「学習の手引き」というページ。

ここには、この単元で子どもが学ぶべき事柄にたどり着けるよう、問いが配置されている。この問いに一つ一つ答えを出していくことで「自分の考え」を構築することが出来る。冒険に例えるなら、これは「靴」にあたる。

 

②いま自分がゴールまでの道のりのどこにいて、どこを目指すべきかがわかるもの

基本的に国語科の単元は下のようなレベル進行で学んでいく。

  • Lv1:班全員が全部の問題を解く(意見を持つ)
  • Lv2:他の班員がどんなことを書いているか交流し、みんなのアイディアを知る。
  • Lv3:みんなのアイディアを合わせて、1つにまとめたり、新しいアイディアを作る。
  • Lv4:他の班の人たちにも伝わるように「説明」を考える
  • Lv5:発表する(本単元のゴール)

これを視覚化したものが下図である。冒険に例えるならこれは「地図」にあたる。

 

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③各レベルでの失敗例と攻略法を表にしたもの

下のような表を子どもたちに手渡す。各レベルに対する注意点である。冒険で例えるなら、「十徳ナイフ」に当たる。

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この手段(道具)を用意した。本単元ではこれらを一気に手渡すことはしない。

なぜなら、「自分たちで考え出す」学習を実現したいからである。

本当に困った時、本当に必要になった時に、これらを手渡す。

 

単元の進行は前記事()で書いたとおりである。授業時間のほとんどすべてを子どもたちの思考時間にあてる。

 ここまでを子どもたちと共有できれば、子どもたちは自らの力でどんどん進んでいくことが出来ます。

 

 

 

第1時:目標と手段の確認ー導入・概観ー

目標:わかったことをクラスにプレゼンすること

手段:グループワークを通して、自分たちの力で目標状態を実現すること(単元の始めはこれだけを提示する)

意義:与えられる学習から、自ら掴み取る学習へ。

 

これらを確認し、授業に入った。導入段階でクラスのみんなはかなり意欲的。教科書の手引きをみて一つずつ考えている様子。先生役を決めるのに時間がかかる。(決まらない場合は、出席番号の若い子から、と伝える。)(ここで児童は全員が先生役を一回はやらなければならないという意識になった。出来る人がやればいいということを伝え直すことが第3時になった)授業後にも、意欲的に取り組んでいる児童もいた。

 しかしこれは、一見、豊かな学びを実現できているか見えるだけで、その内容はかなり浅いということに第2時以降気付くことになる。まあ、導入段階として、各質問をとりあえず考えるということに意義があるといえばある。

 

第2時:班活動ー問題発生ー

全6班(6人構成)が一斉に喋り始めると教室中がかなりうるさくなってしまうという問題を受け、話しをするチームと、個人で問題について考えるチームとに分け、15分で交代させた。

ここで問題点が浮上した。

一人で考えるチームのノートを詳しく見てみると、答え方が不十分なのである。「手引き」に書いてある書きぶりは、

「〇〇をやってみよう」

  「〇〇はどうなっているか教科書00ページで確かめよう」

     「教科書00ページの中で〇〇に関連する語を見つけてみよう」

と、このように問いが入れ子構造になっており、子どもによってどの階層の問に答えているかがバラバラであった。

一番外側の問いに取り組んだ子は、問題が抽象的すぎて答えを考えることができずにいた。

その問題は、グループワークも波及して、悪影響を及ぼしていた。

 

よって、授業の最後に、一人で「解く」時は、入れ子構造の一番内側の問いに答えなければならないこと、グループワークでは、他の人の考えを知ることが目的であることを示した。

 

第3時ー解くことへの専念ー

前回の目的を軽く振返り、本時に臨んだ。前回の反省を踏まえ、

授業の目的を、それぞれの問題を確実に「解くこと」とした。

司会は立てず、一生懸命とく。自分では解けないときには班員に助けを求める。

それでも解決しない時は他の班に聞きに行く。

そうして、全員で問題を「解く」ことに専念した。

子どもたちは積極的に学び始めた。つまずいている友だちに、班のメンバーがアドバイスする姿も見られる。極端に止まってしまっている子どもには僕の方からアドバイスをした。アドバイスとは「これにさえ答えられれば良い」という、単元の根幹に関わるシンプルな質問を提示することである。(具体的には「説明文は誰のために何の目的で書かれているか。広告は誰のために何の目的で書かれているか。」)こうすることで、これに答えようとする児童をサポートする児童にも、単元の根幹への思考を促すことが出来る。

 

第4時ーJump Upー

子どもたちがノッていたので、算数を国語に変更した。

目的は「解くこと」と変えずに行ったが、子どもたちの中でその次のレベルにまで達する班が出てきた。

その班は班で出た意見を一つの紙にまとめていた。それを嬉しそうに教師に見せてきた。私はありったけの褒め言葉を浴びせ、授業の根幹の質問「誰のために、何のために、「広告」と「説明書」は存在しているのか」という問いを投げかけた。その問いにその班はあっさりと答えることができた。よって、そのまとめも紙に書かせ、班の数だけ印刷し、他の班にも参考にさせた。

また、「キャッチコピー」や「」など、児童の語彙に無い語句があったのだが、それを辞書で調べて、ノートに書き、みんなに役に立つだろうから全員分印刷してあげて!という班も出た。

 

ここから、一人ひとりが考えを持つ「解く(自分の考え持つ)」段階を疎かにすると、グループワークはうまく機能しないということがわかった。反対に、そこを確実に保証し、「自分の考え」をよりよく構築できれば、子どもたちは自ずと次の段階へ進むことが出来るということもわかった。

 

子どもたちが「靴」を履きこなし自らの力で歩み出せる様になったところで、次の手段「地図」を手渡した。

「地図」とは、現在自分たちの班の達成度がどの程度で、次に何を目指せば良いのかを測る基準となるものである。

 

Lv1:班全員が全部の問題を解く(意見を持つ)

Lv2:他の班員がどんなことを書いているか交流し、みんなのアイディアを知る。

Lv3:みんなのアイディアを合わせて、1つにまとめたり、新しいアイディアを作る。

Lv4:他の班の人たちにも伝わるように「説明」を考える

Lv5:発表する

 

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このレベル分けは、普段から子どもたちに指導している理解度の段階「解ける⇒説明できる⇒教えられる/発表できる」につながっているため、非常に納得感のある反応が返ってきた。

 

第5時

最初の確認で上の図のレベルを軽く確認し、活動スタート。

Lv3,Lv4に達する班がほとんどで、たくさんの工夫が見られた。

Lv3では、一つの質問に対し、皆が意見を出し合い、それをホワイトボードにまとめ、共通する語をつなぎ合わせ、班としての見解を作っていた。

Lv4では、伝え方の工夫として、本の形にする、クイズを入れる、大きなポスターを作るといった、表現媒体の工夫が見られた。

また、わかったことをどう並べると一番伝わりやすいかという論の組み立てを工夫し始める班も出た。

 

「広告」と「説明書」の違いを述べた後、「両者は対象と目的が異なるため、表現の方法が異なっている」と一度まとめたうえ、例えば本の帯では…というように、他の具体例をもってきて説得力をまそうとする班も出た。またその班は実際に実物をもってきてLv5の発表に臨もうとしていた。

この論の流れはとてもわかり易いので、板書し(下画像)、クラスに周知した。(ピンときたら真似してみて!と。)

 

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最後のフィードバックではLv1止まっていて、今日やっとLv2に進んだ班を褒めた。その班は、メンバー数人がLv1で止まってしまっていた。班のメンバーはその子をおいてレベルをあげようとするのではなく、丁寧に教えてあげ、また、ここまでわかったら、ここからはヒント無しで問いてみて!とか、意見が割れてるけど、どの意見が正しいか考えてみて!など、教師さながらの関わりをして、遅れているメンバーを導いていた。

従来型の授業だと、こんなことまで出来る子どもも、一緒になって、すわって、ただ先生の求める答えを言って終わる。そして、この班で教えてもらっていたような子どもは、結局授業についていけず、単元が終わっていく。

素晴らしい関わりをみることができた。

話の最後に、国語たのしい?と聞くと、全員が満面の笑みを浮かべ大きく頷いてくれた。

 

このあたりからは、6班同時に活動をしているが、やりとりがヒートアップして教室が騒がしくなるということはなかった。班の方向性が定まって来たのだと判断した。

 

 第6時 

今日でおおよそ発表出来る段階までいきましょう。と一言確認し、活動スタート。

 

C班はずっとレベル2の「意見の交流」で活動が止まっていた。

手を抜こうとする2人の男子と、その態度に苛立つ1人の女子、何も意見を言わない男子一人(低学力)女子一人(高学力)、みんなの気持ちを感じ取り、それでもちゃんとしなきゃと思って苦しんでいる女子一人。という構成である。

心配して見ていたがどうも打開策が無いまま第6時まで来てしまっていた。

しかし、今日手を抜こうとする男子一人の態度が変わった。積極的にホワイトボードにみんなの意見をまとめ始めたのである。すると、男子の態度に苛立っていた女子が 、みんなの意見を数式のようにまとめた。これはレベル3「意見をまとめて、新しいアイディアを作る」に当たる。ここから一気にブレイクスルーが起きた。

目を輝かせてそのアイディアを僕のもとに班全員で見せに来た。僕はありったけの褒め言葉を浴びせた。次の瞬間には自由に使える厚紙を数枚取り、大きく数式風のまとめを書き始めた。すると何も意見を言わなかった女子が「この厚紙の裏に台本をかいたらいいんじゃない?」とアイディアを出した。それを聞いた班のメンバーは「おおーー!!ナイスアイディア!!すごい!!」と彼女とハイタッチをした。これが、この「友だちに認められる」ということが、なによりもなによりも彼女の自尊心を高める。友だちは社会そのものなのである。

何も意見を言わない男子も、ペンを持ち、ここぬっていい??と活動に参加でき始めた。授業時間が終わる頃には、各々がセリフを分担し、発表の練習までしていた。

一時間の間にレベル2からレベル5までジャンプアップしたのである。

 

他の班も非常に積極的に発表に向けた準備をしていた。

よって今日は授業の最後の教師の話、振返りの時間をなくし、全てを子どもたちの時間にした。

子どもたちはもう発表の準備をほとんど完了させていた。

しかし、まだやり足りない、もっとできると口々にいう。

 

私は、月曜日に発表会をすることを伝え、授業を終えた。

 

 

第7時 発表会

課題が山積する結果となった。

各班はそれぞれに調べたことを一生懸命発表していた。

内容は素晴らしいものであった。

論の構成や、見せ方もそれぞれに工夫があってよかった。

しかし、発表時の声のボリューム、話し方はかなり未熟であった。

台本に顔を落として小さな声でボソボソと喋る子がたくさんいた。

掲示物の方に体を向け、聞いている友だちに背を向けて喋る子がたくさんいた。

原因は明白である。

発表(プレゼン)の経験が少ないから。

これに尽きる。

国語には、他者がいる。対話的交流の質は上がってきた。なぜなら「学び合い」として、1学期から教科をまたぎ、継続的に行ってきたから。つまりたくさん経験したから、質が上がったのである。(教師のフィードバックももちろん大切である。)

プレゼンテーション的交流の質はまだまだ低いことがわかった。経験量とフィードバックを取り入れ、ここを鍛える。

 

 

成果

◎世界の見え方が変わった。

学習に関する深い学びはとてもあった。授業後、子どもたちは手紙を配る度にそのレイアウトや色使いについて分析するようになった。これは世界の見方が変わっている証である。

 

◎グループ活動の経験量を確保、注意点の意識化。

グループで活動する際に注意しなければならないこと

①グループ内での意見交流時の、まとめ方、聞き方、話し方。

②グループ外への配慮(声のボリューム)、アドバイスやヒントの得方

 

◎自立した学習集団への自信

手引きと学び合いを主体に学習活動を行った。教師にあれこれ言われず自分たちの力で掴み取った学び。

 

◎学びの保証

単元末のまとめテストでは、最高点100点、最低点●、平均点●となった。

基本的な学びは保証できていると判断できる。

 

課題

「問いの読解力」問題

はじめの段階で、手引きの読み方がわからず、何を答えたら良いのかわからなかった児童がいた。これをなくす方法として、WSを活用するという手段がある。

ただWSを使ってしまうと、「問いの読解力」がつかない。これを与えられすぎと捉えるか、与えられるべきと捉えるか。

いや、まて。オプションとして流動的に取り入れればいいのだ。

使いたきゃ使えと。しかし、使わないほうが難しいよと。

それでいいんだ。

 

◎「解く」の軽視

「解く」段階を軽視してしまったために、第2時が有効に機能しなかった。

しかしこれは「問いの読解力」を学ぶためにはいい失敗だったとも言える。

今回この指導ができたことにより、次の単元ではよりスムーズに手引きを活用した学習ができる。

 

◎「発表(プレゼン力)」の低さ

理由は明確。経験量が少ないから。よってこの次の単元「文法」は、1時「解く」2時、授業をする。という構成で行った。目標は、みんなにわかりやすい授業を作ること、目的は、プレゼン経験をすること、そのコツを意識的に認識すること。である。

授業後にプレゼンのコツを問うと口々に答えてくれた。この「コツの意識化」と「経験量」が力の育成に有効である。